あの、音楽家ベートーベンも人生の途中で難聴になっています
難聴などの聴覚障害は、音楽に関わる上で致命的であるといわれています。
後天的な難聴であれば耳が聞こえにくくなる前に記憶した音や、音という概念の存在を理解できますが、先天的な聴覚障害の場合、「音」という概念の無い世界で生きているのと同じことになるからです。(ベートーベンは後天的難聴です)
スティービー・ワンダーやレイ・チャールズのように視覚障害を持つミュージシャンもいますが、聴覚障害を持つミュージシャンはごく僅かなのです。ベートーベンは30代に差し掛かるころ、難聴になっています。音楽家にとっての生命線である聴覚を失ったことで、ベートーベンは絶望の淵に立たされます。そのため、一時は自ら命を絶つことも考えていたようですが、作曲に専念することを決意したようです。
音楽家として活動を続けるにあたり、難聴を克服するために温泉療法なども行っています。その中でもベートーベンは、特製のピアノを難聴の克服にを発注しています。ピアノは、弦を叩いて音を出す弦楽器の一種なので、弦を叩いた振動が伝わってくるようにすれば、難聴であっても音の強弱は把握することができたのでしょう。一説では、口にくわえたタクトをピアノに接触させて、歯を通しての振動を感じていたとも言われています。
ベートーベンは現在で言う骨伝導を利用して音を感じていたのです。ベートーベンは、感じ取った音と耳が聴こえていた時期の音の記憶と音楽知識で作曲を続けたのです。普段の生活では、筆談と聴診器(その当時の補聴器のかわり)で会話を行っていたようです。
彼らのように「突発性難聴」などで、音が既に記憶されている人は「話し言葉=発音」の問題はなくなるわけです。
ベートーベンが難聴になった理由には、現在、いくつかの仮説が存在しています。
暴力(殴打)説
父ヨハンのスパルタ教育の中で、耳を殴打されたのが原因となったと言う説。
梅毒説
梅毒は15世紀ごろからヨーロッパで猛威を振るった病気で、ベートーベンは母子感染する先天梅毒だったのではないかという説。これは、梅毒の症状に難聴があること、梅毒の潜伏期間とベートーベンの難聴発症の時期が符合すること、梅毒の精神的な影響とベートーベンの癇癪などの根拠から有望視されている説と言えます。
鉛中毒説
当時のヨーロッパは酢酸鉛を甘味料として食品添加物に使っていたと言われています。鉛中毒も難聴や神経系への影響があるだけでなく、ベートーベンが悩まされていたといわれる腹痛や下痢にも当てはまるため、有力な説とされています。